2024.05/15日号|RESEARCH Conference 2024 イベントレポート

●①ポスターセッション(16Fサブコンテンツ)
●②講演:花王/秋田さん
●③講演:グッドパッチ/秋野さん
●④講演:ディー・エヌ・エー/大道さん・山本さん
●⑤講演:KDDI/花井さん・奥山さん・花田さん
●⑥ネットワーキング(アフタートーク)
●⑦まとめ(テーマ・会場)
菅原大介|リサーチャー 2024.05.20
誰でも

先週、5/18土曜に今年のリサーチカンファレンスが開催されました。オンラインでは約1500人、オフラインでは500人超、申込人数は合わせて2000人規模となるリサーチの一大イベントに、私も初の現地参加をしてきました。

今回のレターでは、講演セッション・交流セッションそれぞれで得た学びや見どころをレポートします。最後のまとめにあらためて書きますが、学習機会としてもイベントとしても良すぎました。運営スタッフの皆様に感謝です。

※メールのプレビュー画面でもご覧いただけますが、タイトル領域をクリックするとウェブ版に遷移して記事形式で本文全体をご覧いただけます(今回はオープンコンテンツにしています)
※講演内容はその場の聞き取りメモのみで振り返っているため、スライドに投影された正確な表記とは異なる場合があります。
※スピーカーセッションの中には当日のみの情報共有に限る回もあり、その場合は概説と印象のみ記載するようにしています。

🔍リサーチハック 101(2024.05/15日号)

「RESEARCH Conference 2024 イベントレポート」

●①ポスターセッション(16Fサブコンテンツ)
●②講演:花王/秋田さん
●③講演:グッドパッチ/秋野さん
●④講演:ディー・エヌ・エー/大道さん・山本さん
●⑤講演:KDDI/花井さん・奥山さん・花田さん
●⑥ネットワーキング(アフタートーク)
●⑦まとめ(テーマ・会場)

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●①ポスターセッション(16Fサブコンテンツ)

12:50-13:50・16:00-17:00|ポスターセッション(コアタイム)

実は今回の来場体験で一番印象深かったのが今年始まった展示・交流スペース「ポスターセッション」でした。運営上はサブコンテンツという位置づけになっていますが、場内の熱量としては「もう一つのメイン」と感じられるくらい。

到着と同時に主催者の草野さんにお話を伺うことができ、学会の発表の場では定番の手法だけど、実務者が行うのは実験的な試みとのこと。ポスター間の距離の近さもあって市場(いちば)のように飽きずに見て回る楽しさがありました。

個人的には、企業枠ではデザイン・リサーチについていつも有益な情報発信をされている企業の方々との語らいや、学生枠ではリサーチリポジトリ構築の取り組み(もともと教育機関由来の概念なので自然なのですが)が印象的でした。

※以下、スマートバンクのブログにてポスターセッション(社会人枠)の様子を誌上ツアーのように読める記事や、企画担当の西村さんによる振り返り記事が早くも上がっており、あらためて本企画の充実ぶりを感じることができます。

ほか、16F会場のもう半分では、講演のスクリーン投影、コーヒーほかの軽食をはじめ、思い思いに過ごすスペースがあり、16Fでの参加者一人一人の滞在時間は長いように感じました(仕事柄からか「滞在時間」に反応してしまうw)

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●②講演:花王/秋田さん

14:20-14:55|生活者研究のめざすところ~生活者起点で未来のくらしを発想する
花王株式会社 コーポレート戦略部門コンシューマーインテリジェンス室 室長 秋田 千恵 氏

花王で20年に渡り生活者研究を担当されている秋田さんからは、生活者を理解する役割を担う伝統的な取り組みとその意義について発表がありました。

花王では特に生活者の家事スタイルを中心に、生活現場での対話と観察をベースとする調査によって、世代ごとの変化や少し未来を捉えているとのこと。

リサーチのプロセスにはダブルダイヤモンドを取り入れ、「課題発見(生活者発想)→HMW→課題解決(消費者発想)」の構図が印象的でした。

管掌部門(名称)の変遷も個人的には興味深く、2015年頃にはマーケティング部門、2020年頃に現在のコーポレート戦略部門になったということです。

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●③講演:グッドパッチ/秋野さん

15:00-15:20|自分のリサーチスキルが分かり、スキルアップの道が見える--グッドパッチで始めた「リサーチ道場」
株式会社グッドパッチ  UX Designer/Design Division XD Unit Director  秋野 比彩美 氏

グッドパッチのUXデザイナー・秋野さんからは、社内で行っている「リサーチ道場」(リサーチのスキルアップシステム)の実践の発表がありました。

背景として、仕事のメインであるクライアントワークはプロジェクトベースであることから、リサーチを体系的に学ぶ機会を模索して始まったとのこと。

スキルマップはHCDのコンピタンスを源流とする60個の観点から成り、設計・実施・分析・可視化に編成して、レベルを1〜4で定義しているそうです。

取り組みの中で、「他者を知る」(レベルが高い人の案件に記録係で同席する)は本当にそうだと思いました。実践の数も大事ですが質は変え難い体験。

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●④講演:ディー・エヌ・エー/大道さん・山本さん

16:30-17:05|「リサーチ・ドリブン・マーケティング」~リサーチで事業の意思決定をリードするマーケティング組織の在り方~
株式会社ディー・エヌ・エー ライブストリーミング事業本部Pococha事業部マーケティング部ストラテジー・リサーチグループ マーケティングリサーチャー 大道 あゆみ 氏
株式会社ディー・エヌ・エー ソリューション事業本部ストラテジックマーケティング統括部マーケティング部コンシューマーインサイトグループ マーケティングリサーチャー 山本 寛 氏

ディー・エヌ・エーのマーケティングリサーチャー・大道さん・山本さんからは、ライブ配信サービスにおけるマーケティングリサーチ組織の役割について。

まず、デジタルマーケティングとの違いとして、マーケティングリサーチは「これからお客様になり得る人の理解」に長けているという説明がありました。

この不確実性が高い状況に対して、消費者に加え事業の勘所も理解して、リサーチャーが率先して動く姿勢がリサーチドリブンには欠かせないとのこと。

まとめでは、「新たな調査手法を活用しながら人と社会を考察し、事業内のコミュニケーションのハブになる」というリサーチャーの気構えも聞けました。

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●⑤講演:KDDI/花井さん・奥山さん・花田さん

17:10-17:45|『両利きのCX』を実現するデザイン部門の役割
KDDI株式会社 マーケティング本部 デザインセンター デザイン1G グループリーダー サービスデザイナー 花井 陽子 氏 奥山 真広 氏 花田 直人 氏

KDDIのデザインセンターからは、花井さん・奥山さん・花田さんの3名から、全社のデザイン教育や事業部門の伴走支援を行う取り組みが共有されました。

詳細な記述は避けますが、相対部門のデザイン習熟度に合わせてデザインの介入方法(支援する調査手法やインナー啓蒙活動)を変えるという内容でした。

全編が内省を促す提言に満ちており、特に、デザインが無い=時代に合った組織や開発プロセスでない、リサーチが無い=企業リスクの話は刺さりました。

支援実行にあたり「UXの5階層すべてに関わる」というスタンスを取っていることも納得度が高く、そうしないとプロセスの中で文脈が欠落するそうです。

***

●⑥ネットワーキング(アフタートーク)

18:00-19:00|ネットワーキング(アフタートーク)

スピーカーセッションの終了後は、スピーカー、一般参加者、ポスターセッションの発表者が交じって交流するネットワーキングの時間に。1時間という区切られた時間がちょうど良かったです(話し足りなかったので二次会をするにもほどよい時間でした)

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●⑦まとめ

最後に、テーマと会場の面からイベントを振り返ってみたいと思います。

*テーマ(講演者・参加者)

テーマにも、よりいっそうリサーチのイベントらしさを感じたのが今年の特徴でした。これは散会後に参加者とご飯会をしていた時に一致した感想なのですが、デザイナーを対象とする他の大型イベントよりもリサーチャー主体の取り組み共有が上がった印象です。

リサーチカンファレンスも昨年まではプロダクトマネージャーが開発プロセスとしてリサーチの活用法を共有するイメージのセッションが多く、実際、昨年のレポートを見返してみてもそう思いました(RESEARCH Conference 2023イベントレポート

それに加えて、ポスターセッションの実施による産官学的なアプローチや、マーケティングリサーチを主とするスピーカーの比率が上がったことからか、より年代比に厚みが出て、これが「リサーチ従事者らしさ」を実感する要因になったものと推測しています。

*会場

会場は共催している専修大学の神田キャンパス10号館で、東京メトロ九段下駅出口を出てすぐの超好立地でした。非営利目的で実施される大型イベントは、駅から遠い場所や見つかりづらい場所で開催されることも多いのですが、アクセスの良さが抜群でした。

学内の導線がコンパクトなのも驚きでした。3Fと16Fがメインの会場になっており、エレベーターや廊下の導線がシンプルかつ短いので、移動中にもすれ違いざまに知人と会えることがしばしばでした(おそらく出展スポンサー的にも最高の導線だったのでは)

講演セッションを行う大教室の椅子の座り心地も最高でした。包み込まれる柔らかさで長く座っていて疲れません。全体的に大学の教場としての良さをそのまま享受できたイメージ。お腹が空いたら上で軽食を取ったり1Fで休憩したりという行き来も便利でした。

***

●あとがき

2024年のリサーチカンファレンスは「ROOTS」がテーマでした。講演と交流のコンテンツから組織・手法・規模が様々な事例に触れて、あらためてリサーチの豊かさに気づかされました(普段のプロダクトリサーチがすべてではないので)

年齢を重ねるにつれ、長く「リサーチャー」という職業をまっとうしている方への尊敬の念が増しています。定性調査、特にエスノグラフィのプロの方に多く見られるのですが、学ぶことと働くことを両立されているスタイルがすごいなと。

足元では組織変革(例:Ops)や技術対応(例:AI)など今の時代に合わせてやらなければいけないことがありがますが、長くリサーチの活動を続けるにはそうした得意分野のピボット以外にもできることがありそうだと思い始めています。

最後になりますが、「ニュースレター見てますよ!」と会場で声をかけてくださった皆さま、ありがとうございます!書いていて良かったです◎ おかげさまでリサーチカンファレンスのオフライン参加者の規模くらいになってきました笑。

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